補足説明

前回いただいた疑問のうち、答えられるものに答えておきます。


鍼灸は、きちんと確立されていないのではないか?

歴史的に見ると、確立されたことはあります。黄帝内経素門・霊枢と黄帝八十一難経という医学書において一応の完成をみました。しかし、書かれたのが数千年前なので、そこから大変に枝分かれしています。現在の鍼灸の流派は、基本的に「素門・霊枢」と「難経」と「それ以外」が混ざりあって出来ています。各流派の違いは、配分の違いと言っていいと思っています。ちなみに「素門・霊枢」と「難経」は今でも最重要古典医学書であり、「素門・霊枢」からは中医学、「難経」からは経絡治療が生まれています。


・どこに刺しても同じなら、経穴に意味はあるのか?

どこに刺しても同じではありませんし、そのようにも書いておりません。しかし、説明を省きすぎたのでそう受け取られても仕方なかった点は認めます。

特異的効果(そのツボの場所でないと発揮されない効果)の例として、足三里のツボを挙げます。主に胃腸症状に有効な経穴であり、胃酸の分泌を促すという特徴があります。しかし、全身のどの場所に鍼を刺しても胃酸が分泌されるかといえば、それはありえません。

次に、非特異的効果(どこに刺しても起こる反応)の例として、局所の血行促進を挙げます。鍼を刺すとごく小さな傷ができます。傷は治さなければならないので、栄養や白血球を送り込む必要があります。そのため、鍼を刺した場所は血流が良くなります。この反応は炎症や筋肉のこりを改善するのに役立ちます。


・刺さなくていいのなら、何故刺すのか?

ツボを刺激する方法は鍼を刺すことだけではありません。接触鍼もその一つです。しかし、一つの手法だけで全ての症状に対応することは技術的に困難です。(例:ペーパーナイフで紙は切れても、ダンボールは切れません。そこはカッターナイフの出番でしょう)それでも頑張れば一応の結果は出るでしょうが、最高の結果には遠いでしょう。ただ例外というのはあるもので、一部には接触鍼だけで治療する鍼灸師も存在します。